フラメンコギタリスト、沖仁さんが、他ジャンルのミュージシャンとコラボしたアルバム「Dialogo[ディアロゴ]~音の対話~」を出しました。coba、東儀秀樹、上妻宏光、渡辺香津美、玉置浩二…実力者たちとの共演はどれも極上の音世界。沖さんの力量と包容力を感じます。
沖 仁(Jin Oki) - Dialogo 【ディアロゴ】
■共演者は好きで憧れの人たちとか。
沖 ジャンルの垣根を跳び越え、自分のカラーを強烈に持つ方との真剣勝負をアルバムにまとめたかった。僕が本気になるのが重要ですから。お互いが本気でぶつかり合って初めて調和する、っていうのをやってみたかった。
■東儀秀樹さんとのコラボが素晴らしい。篳篥(ひちりき)、笙(しょう)の、ふぅーーと伸びる音にフラメンコギターが絡まって、地平の広がりの上の躍動みたいなものを感じました。
沖 東儀さんと最初に話をしたとき、ジャンルの垣根はこんなにも高いものなのか、と思った。接点を見いだそうと“シルクロードがキーワードだよ”って、“フラメンコもロマの人たちがインドからスペインに流れてきて”みたいな。でも話せば話すほど、こんがらがる。これ、どうなるんだろうと思ったんですけど、スタジオでお互い音を出した瞬間に「あっ、何も心配要らないな」と。東儀さんの音は声みたいで、その声を聴いて自分の声で応えればいいと腑に落ちてから楽しくなった。音の対話ができたと思います。東儀さんは雅楽の正統な伝承者でありながらすごい自由な人。だからつながれたんだなと思います。
■cobaさんのアコーディオンとのコラボは心地よいミックス感がある。
沖 cobaさんはアグレッシブな部分だけでなく、すごくロマンチックでピュアなところを持った方。月の下で長年連れ添った老夫婦がダンスしてるようなイメージの曲に仕上がりました。
■ギターの雅‐MIYAVI‐さん、三味線の上妻さんはともに攻撃的でガンガン来る。上妻さんとのコラボはパッションの二重奏のよう。
沖 (津軽三味線とフラメンコギターは)社会的に虐げられた人たちの叫びみたいなもので共通する。上妻さんとは年も近い。伝統音楽を核に自分にしかできない音楽をやろうとしている。立場がすごく近い。あまり台本が必要のないセッションで、一番自由にやれました。
■フラメンコ歌手ドローレス・アグヘータさんとの曲はディープですね。
沖 フラメンコの一番核の部分、トラディショナルな形を提示したかった。でもなかなか難しかった。真剣にしか歌えないという人なんで、ピュアな心で歌う。次に何を歌うか分からないんですよ、伴奏やってても。リハはやらないし、毎回違うことやるし。
■玉置浩二さんとの曲「屋根の下のSmile」はすごく楽しんで弾いていらっしゃる感じ。
沖 玉置さんはスペシャル。玉置さんの歌にギターを絡めるには今までの自分では無理だな、これは歯が立たないなと思いましたね。あらゆるものに反応しながらその時感じたことを歌ってる。ギターへの反応が超人レベル、ものすごく聴いている。その時その時でものすごく変化する。玉置さんはフラメンコだな、と思いましたね。とても刺激を受けました。
■元々はBO〓(〓は「O」に「/」)WYとかロックが好きだったとか。なぜフラメンコギター。
沖 20歳の頃、ビセンテ・アミーゴというギタリストを知り、とにかく格好よくて、はまってしまった。元々“言わないではおれない自分の思い”を音楽で出そうと思っていたんですけど、友だちが少ない。ロックは一人ではできない。フラメンコギターはロックのように激しいのに生楽器で、一人でどこででもできる。フラメンコは老弱男女、人生で起きることを全部ギターにのせられる、包容力がある。単なる民族楽器ではなく、もっと大きなもの。その可能性を提示したのが今作。フラメンコギターでこんなことやったやつはいないという気持ち。もっともっとできるはずとも思っています。 将来の目標はスペインのフラメンコの世界の中で自分の意義は何か、答えを見つけたい。向こうのアーティストが見たときの僕の存在意義を見いだしたい。チャレンジしたいと思います。
▼おき・じん 1974年長野県生まれ。14歳からギターに親しむ。ロック、クラシックをへて20歳の頃からフラメンコギターを始める。2006年メジャーデビュー。2010年7月、スペイン三大フラメンコギターコンクールの一つ「ムルシア“ニーニョ・リカルド”フラメンコギター国際コンクール」国際部門で日本人として初めて優勝する。
情報元:西日本新聞
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